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 リズは厨房でじゃがいもの皮を剥いていた。要塞で働く料理人はスピナから来ている恰幅の良い主婦で、彼女は二日に一度ここへ来て、二日分のご飯を作って帰るといったルーティンをこなしている。
「リズちゃん、本当に明日の朝ご飯を作ってくれるのかい?」
「はい。任せてください」
 手を止めて顔を上げたリズは料理人に向かって微笑んだ。

 料理人は頬に手を添えて申し訳なさそうに謝ってきた。
「ごめんねえ。前までは毎日働きに来ていたんだけど、旦那がぎっくり腰で動けないから」
「困ったときはお互い様です。早くおうちに帰って旦那さんの看病をしてください」
「本当にごめんねえ。今度美味しいクッキーを焼いて持ってくるからね」
 料理人はリズに何度も謝ってからお礼を言うと、スピナへと帰って行った。
 再び作業に戻り、朝食の献立を考えていると、妖精たちがひそひそと囁きあいながらやって来た。
「みなさん何を話し込んでいるのです?」
 質問を投げるとヴェントがこちらを向いて答えてくれる。