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 クロウは雫型のピアスの留め具に触れた。
 丁度リズのことを報告したかったので連絡が入ったのはありがたい。
「やあクロウ。あれから連絡が来ないから心配していたんだ」
 クロウは連絡の途中で通信を切ったことを思い出す。状況が状況だったとはいえ、後で謝罪の連絡を入れるべきだったのにそれができていなかった。
「謝罪が遅れてしまい大変申し訳ございません。国王陛下に於かれましては大変不快な思いをされたことでしょう」
 改めて心からの謝罪を口にすると、ウィリアムが笑いながら言った。

「別に構わないさ。隠密からの報告は受けているし、そちらの事情も把握している」
 ウィリアムは謝りの連絡を寄越さないクロウに抗議するためではなく、心配して連絡を寄越してくれたようだ。彼が広い心の持ち主であることは知っているが、忠誠を誓った家臣としてクロウは誠実さを改めて示した。
「寛大なお心に感謝申し上げます。ところで陛下、実は早急にお話ししたいことがございます」
 クロウがリズの話を切り出すと、ウィリアムは真摯に耳を傾けてくれた。


「――実に興味深い話だ。クロウに食事を作っていた時点で聖女の力が発現していたとなれば、羅針盤が光っていてもおかしくないな」
「俺もそう思います。何故羅針盤は一向に光って次期聖女のいる方角を示さないんでしょう? 羅針盤が壊れてしまったということでしょうか?」