立ち上がって鉄格子に近づくと、そこには沈痛な表情を浮かべたドロテアが姿を現した。

「大変なことになってしまったわね、リズベット」
「叔母様っ! 何度も言っていますが私は聖杯を壊していません。あの修道女たちはきっと私を誰かと見間違えています」

 必死に訴えるとドロテアは分かっていると何度も頷いた。

「真面目なあなたがあんな悪いことをするはずないもの。今あなたのアリバイが立証できないか調べてもらっているの」
 ドロテアは鉄格子を握り締めるリズの手に自身の手を重ねて力強く握り締める。
「リズベット、必ず救ってあげるから少しの間我慢してちょうだい」
「……っ、分かりました」

 彼女は聖国唯一の聖女で大司教と同等の地位にある。きっとあらゆる手を使って助けてくれるに違いない。
 この時リズは、ドロテアが必ず自分をここから救い出してくれると信じていた。

 しかし、いくら聖女であるドロテアであってもリズの無実を証明することはできなかった。
 結果として、リズは妖精界へ追放されることが決まってしまった。