メライアが聖女となりドロテアが引退したら、どこかの町で一緒に暮らせるかもしれない。リズの胸の中で期待が膨らんでいく。
「まずは羅針盤を確かめないことにはどうにもなりませんよ。それにまだ彼女にも話していない内容ですので……このことはくれぐれも内密にお願いします」
 ヘイリーは口元に人差し指を立てた。

「分かっておる。わしは一度教会本部に戻って羅針盤が光っていないか確認してこよう」
「お願いします。――さて、立ち話も何ですし一度応接室の中へ。美味しいお茶とお菓子を用意していますので、寛ぎながら今後のお話を致しましょう」
「そうですね。私もゆっくりお茶を飲みながら、詳しいお話が聞きたいですわ」
 三人は談笑しながら応接室へと入っていった。

 まだ、周りには秘密となっている次期聖女の存在。
 リズは早くメライアに伝えたくてうずうずしたが、これは自分よりもヘイリーの口から言われた方が彼女はきっと感激するだろう。
(このことは誰にも言いません。私だけの秘密です)
 ヘイリーがメライアに聖女だと告げるその時まで、リズは口が裂けても漏らさないと胸に刻んだ。