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(ベリーレモネードのお陰で毒の浄化に成功したのはとても嬉しいですが、病室に留まれば大司教様に鉢合わせしてしまいます……)
 ヘイリーが大司教とドロテアを迎えに行った後、リズは内心パニックを起こしていた。こんな辺境地まで教会本部の人間が、しかも重鎮が訪れることはないだろうと高を括っていたのに、その予想が大きく外れてしまった。

(いくら子供の姿になっているとはいえ、大司教様に私がリズベットだと見抜かれてしまったらどうしましょう。そんなことになったら叔母様の努力が水の泡です)
 ドロテアは決死の思いでリズを逃がしてくれた。
 味方であるドロテアもいるのだから、万が一正体が大司教にバレてしまっても庇ってはくれるだろうが、これ以上の迷惑は掛けたくない。

「あ、でも年齢が巻き戻ることなんて普通はあり得ないですし、大司教様は小さい頃の私を見たことがないです。……だけど、姿が子供だとしてもリズベットはリズベットなわけなので……」
 逡巡しながらぶつぶつと呟いていると、メライアに肩を叩かれた。
「リズ、ここは落ち着いているからあとは私に任せて。それより、大司教やドロテア様のために茶菓を用意して隣の建物の応接室へ運んでくれる?」
「あ、えっと。はい。もちろんです」
 リズは我に返ると明るく返事をして、それから閃いた。