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 離れ棟にいるクロウは仲間の容態が心配で気が気ではなかった。
 ヘイリーたちが要塞へ向かってから数日。死霊の接吻の呪いを受けて身動きがとれないにせよ、大人しく待っているのは性に合わない。
 自分も何かできないかと考えた末、教会敷地内の掃除や傷んでいる箇所の修理などを行った。手を動かしていれば悪いことは考えずに済む。今は教会地下から要塞へ送る追加の氷を氷室から運び出している。

 氷を藁で包んでから荷台に積み込んでいると信者の相談を終えたケイルズがやって来た。
「わあ、ありがとうございます。そろそろ追加の氷を持っていく準備をしようと思っていたところだったので非常に助かります」
 ケイルズが感激するのでクロウは首を横に振った。
「これくらいさせてくれ。じっとしていられないし、ソルマーニ教会には迷惑ばかり掛けている」
「そんなことありません。第三部隊シルヴァには日頃から平和維持に勤めていただいておりますから。……さて、僕も氷の積み込みを手伝いましょう」
 ケイルズが氷を抱えようとしたので、クロウは手で制してきっぱりと断った。