渡り廊下を通って屋内に入り、廊下を進んでいくうちに奥の方から苦しそうな呻き声が聞こえてくる。突き当たりにある扉がそうだろうか。
 リズが前を見据えながら考えていると、丁度扉が開いて中から額の汗を拭うメライアが現れた。彼女はこちらに気がつくと少しホッとしたような表情を浮かべた。
「司教、早めに来てくださりありがとうございます。マイロン様も今までお手伝いありがとうございます。あとは私たちで看病を行いますので仕事にお戻りください」
「分かりました。また、何かあればいつでも声を掛けてください」
 マイロンは一礼してから踵を返す。

 隊の半分が毒に冒されているため、前線で戦える人間の数には限りがある。その中でマイロンは人員を回して要塞を守っている。クロウに代わって重責を担っている彼が精神的に一番疲弊しているはずなのに、そんな素振りは少しも見せない。
 リズがマイロンの後ろ姿を眺めていると、ヘイリーがメライアに質問を投げる。
「メライア、騎士たちの容態はどうですか?」
 ヘイリーが状況の確認をするとメライアが声を潜めた。