要塞に到着したリズはその存在感に圧倒されていた。
 高く築かれた建物は頑丈な造りで魔物の侵入だけでなく、敵兵の攻撃すらも返り討ちにできるような構造になっている。要塞という場所が新鮮に映る一方で、殺伐とした空気を肌で感じる。
 門番に通されて要塞内部へ進んでいくと、その空気はより一層濃くなって自ずと肩に力が入る。馬小屋に馬を繋いでから荷物を運ぶヘイリーと門番の後ろをついて行く。

 案内された石細工の建物の中に入ると、前を歩いていた門番がくるりとこちらに身体を向ける。
「こちらで少々お待ちください。副隊長を呼んで参ります」
 廊下を曲がって姿を消した門番は程なくして副隊長を引き連れて帰ってきた。

 短く刈り上げた焦げ茶色の髪に杏色の瞳の青年だ。頑健な体躯で背は高く、聖騎士の制服に身を包んでいるが、風貌からして傭兵のようにも見える。かといって粗暴な雰囲気はなく、彼は礼儀正しくヘイリーに挨拶をした。
「ソルマーニ教会のヘイリー司教、よくお越しくださいました。第三部隊シルヴァ隊長・アシュトランに代わり副隊長のマイロンが挨拶を申し上げます」
「長い挨拶はそこまでにしましょう。今は病室にいる患者の容態が知りたいので案内していただけますか?」
「承知しました。先に到着されたメライアさんには看病をしていただいています」
 マイロンは丁寧に答えるとすぐに病室へと案内してくれた。