クロウの耳にぱたぱたと走る音が入ってくる。それは徐々にこちらに近づいてきていた。
「……陛下、申し訳ございません。誰か来たので一旦通信を切らせて頂きます」
 クロウは素早く通信を切る。
 暫くすると顔を真っ青にしたケイルズがこちらに駆けてきた。

「ケイルズ、こんな朝早くにどうした?」
「クロウ殿、大変です。き、緊急事態ですよ!!」
 ケイルズは息を整えながら次の言葉を紡ぐ。
「たった今、要塞から連絡がありまして。……シルヴァの半数が魔物の毒にやられて重症になっているそうなんです!!」
「なんだと!?」

 魔物の毒は種類にもよるが大半が即効性だ。
 彼らを離れ棟の隔離施設まで連れてくるにしてもベッドの数が足りない。さらに言えば、隊員の半数が重症の状況で残りの半数に要塞をあけて手伝わせるわけにはいかない。
 この混乱を突いて、魔物が要塞へ押し寄せてくればスピナに危険が及んでしまう。

「まずは司教と話し合わなければ」
 クロウはケイルズと一緒にヘイリーのいる司教室へと急いだ。