首を傾げながら尋ねると、クロウの手がリズへと伸びてくる。
「じっとして。口端についている」
 クロウはリズの口もとについたマッシュポテトを器用に指で掬うと、それをぺろりと食べた。

「なっ、なななっ!?」
 たちまちリズの顔は火山が噴火したようにボンッと真っ赤になる。
(私の口についたマッシュポテトをクロウさんが食べました!?)
 頭の中が真っ白になったリズは口をぱくぱくと動かすだけ。

「どうしたんだ、リズ? 照れているのか? 可愛いなリズは」
 クロウはリズを幼い子供として扱っている。しかし、中身が十七歳であるリズにとっては、心臓が持たないくらいの破壊力だった。

「もうっ、お兄さんたら。わ、私を子供扱いしないでください。これでも私はれっきとしたレディなんです」
 頬を膨らませて主張するも、クロウはリズが子供扱いされたことをまた不服に思っていると勘違いしているようだ。現に今も頭をぽんぽんと叩いてあやしてくる。

「子供扱いして悪かった。さあ、食事を楽しもう。君が作る料理はどれも絶品だから」
 クロウに促されてリズは再びご飯を食べ始める。

 その後リズはデザートが済んでも、後片付けをしていても、頬の熱はなかなか取れなかった。