「司教、どうかアスランのことは目を瞑っていただけないだろうか。俺が一生懸命子供の頃から世話をしたので人に危害を加えることはありません」
真剣な目つきのクロウはアスランを庇う様にして前に立つと、ヘイリーの説得に入る。
クロウはずっとアスランのことを妖精獣ではなく、人に危害を加えない魔物だと思っている。
「アシュトラン殿が子供の頃からお世話をしていたのですか? これまでに前例のない話ですね」
ヘイリーは妖精獣を子供の頃から育てたというクロウの話に目を見張る。
「はい、俺が一からお世話をした結果、彼は人を傷つけない善い魔物になりました」
ヘイリーはそこで漸くクロウと話が噛み合っていないことに気づくといつもの柔和な表情に苦笑の色を滲ませる。
「……アシュトラン殿、この子は魔物ではありません。知らないのも無理はないと思いますがこの子は伝説の妖精獣ですよ」
「…………え?」
クロウは目をぱちぱちと瞬かせると「ようせいじゅう」とヘイリーの言葉を反芻する。そして、一拍置いてから言葉の意味を呑み込むと、一瞬にして顔が真っ赤になったのだった。
◇
食堂では夕飯用に作っておいた料理が並べられる。
ほわほわと湯気が立ち上る、パセリを散らしたソーセージとキャベツの白ワイン蒸し。砕いたナッツがアクセントになっているビーツのマッシュポテト。そしてデザートには森で摘んだばかりのブルーベリーをふんだんに使ったマドレーヌ。
それらを囲んで座るのはいつものメンバーに加えて顔を手で覆うクロウだった。まだ恥ずかしがっているようでほんのりと頬が赤い。



