「アスラン、お外に出たいのですか?」
 アスランが頷くのでリズは扉を開けてあげる。すると、裏勝手口にはクロウの姿があった。

「騒がしいから泥棒が入ったのかもしれないと思って、駆けつけさせてもらった。一体どうされたんですか?」
 帯剣して現れたクロウは血相を変えて、厨房内を観察する。
 そして、手前にちょこんと座るアスランを目にした途端、彼は破顔して両手を広げた。


「アスラン! 一体どうしてここに来たんだ!?」
 アスランは親を見つけた子供のようにクロウに駆け寄るとゴロゴロと喉を鳴らして顔をクロウの身体に押し当てる。
「何も告げないままいなくなってすまない。寂しい思いをさせてしまっているな。マイロンに面倒を見てもらうよう頼んでいるが……やはりだめだったみたいだな」

 以前クロウは、アスランは自分以外の相手には懐かないと言っていた。マイロンに面倒を見るようお願いしていたようだが、アスラン本人がそれを嫌がったようだ。
 久しぶりにアスランに会えたことがとても嬉しいクロウは始終、彼の白いたてがみをわしゃわしゃと撫でている。
 やがて、状況を思い出したクロウは咳払いをすると、困った表情を浮かべた。

「呪いが解けたらすぐにでもおまえのもとに帰る……だからもう少し待っててくれ」
 クロウは宥めるが、アスランは悲しい声「キュウウン」と鳴く。
 その声は親から離れたくない子の鳴き声で、この場にいる全員がアスランの鳴き声を聞いて胸を痛めた。