「一体どうしたのですか……って、これは……妖精獣ではないですか!」
 いつも温厚で少しのことでも動じないヘイリーが珍しく大声を上げる。やはり、滅多に出会えない奇跡の存在なので相当驚いているようだった。
 メライアはというと、ぽかんと口を半開きにしてその場に突っ立ったままだ。

「リズ、どうして妖精獣が厨房で寛いでいるのですか?」
 ヘイリーに尋ねられてリズは答える。
「アスランはもともとお兄さんがお世話している子なんです」
「まさか妖精獣を飼っていると!? あの妖精獣を!? しかも名前までついてる!?」
 予想外の言葉を聞いて、さらにヘイリーの声は大きくなる。

 これでは埒が明かない気がしたのでリズはことの経緯をヘイリーたちに話した。
「――なるほど。子供の頃に助けてそのまま懐いてしまったと」
 神妙な表情を浮かべるヘイリーに対してケイルズが頭を抱えた。

「いやいや。いくら子供の頃に助けたからといって、妖精獣が懐くなんて聞いたことないよ!」
 議論していると、アスランが目を開け、耳を小刻みに動かしながら頭をもたげた。それから身体を起こして裏の勝手口へと移動する。
 扉をカリカリと軽く爪で引っ掻くのでリズが声を掛けた。