突然責められて面食らっていると、修道女が風呂敷の結び目を解いた。中から明日の儀式で使用するはずの聖杯が顔を出す――が、縁の金細工が割れて盃の瑪瑙にはヒビが入っていた。
 無残な姿になった聖杯を見て、リズは目を丸くする。

「誰がこんなひどいことを……」
 暗い表情で呟くと、付き人の聖騎士が舌打ちをした。
「しらばっくれるな。これを壊したのはおまえだろう?」
「ええっ!?」

 リズは聞き咎めた。
 そもそもの話だがリズは聖杯が邸にあったことすら教えられていない、保管場所すら知らない。
 これは完全なる濡れ衣だ。リズはすかさず反論した。

「どうして私なんですか? 私は聖杯を壊していません」
「じゃあ誰がやったと言うんだ? 俺やドロテア様は先程までずっと礼拝堂にいた。聖杯を壊せる時間はない」
「聖杯がいつからあるかなんて私は知りませんでした。それに場所も教えられていません。どうやって知るというのですか? 私を疑うなら私以外にも、邸を掃除していた修道女や見習いの修道女がいるでしょう?」

 すると今まで黙っていたドロテアが口を開いた。