彼氏がいるにも関わらず、不覚にもキュンキュンしてしまった。


「何だよ?俺ならあれの何倍もキスしてやるよ」


…いや、断じてキスとかそういう問題ではない。


「颯さん、」


首をブンブンと振ったものの、時既に遅し。




「お前は俺のもんな」




動かないようにがっちりと固定された私の首に、一瞬だけ痛みが走った。


目を見開いた私が捉えたのは、唇を舐めながらにやりと笑う狼みたいな颯さん。


「っ、」


颯さんに噛まれたところは熱を含んでいて、



「印つけたから」



色っぽい目でこちらを見てくる彼の目は、吸い込まれそうな程に美しかった。





と。


「ちょっとちょっと、いつまでナナちゃん独り占めする気?日が暮れちゃうじゃない」


本当に男なのかと耳を疑う程に甲高い声と共に、閉め切られていたリビングのドアが勢い良く開かれた。


「ナナちゃん、ずーっと待ってたのに全然来てくれないじゃん。こんな兄貴の所に居てもつまんないだけだからおいで?」


私の首にキスマークをつけたばかりの颯さんを一瞥した千晶さんは、ずかずかとリビングに入ってきて私の腕を優しくとる。


「邪魔すんな」


「僕らの時間を邪魔したのはそっちでしょう?2時間も待ったんだから次は僕のターンだよ」


颯さんの言葉に半ば噛み付くように答えた彼は、私に対しては瞬時に笑顔を向けた。