そして彼は、寝泊まりさせてもらっている分際で家事をほぼ手伝わないという最低最悪を極めた男である、つまりただの迷惑でしかない。



「お兄ちゃん達ずるい、いつもそうやってナナお姉ちゃんを独り占めして!僕許さない!」


「そうだそうだ、許さない!」


私がぼんやりとそんな事を考えていると、ふと、私達の元にお揃いのTシャツを着た幼い男女が現れた。


ペタペタと音を立てながらソファーを走り回った彼らは、合図していないのに同時に足を止めて私の方を指さす。


「ナナお姉ちゃんは、僕のものだ!」


「ナナお姉ちゃんは、私のものだから!」


(ふふっ、)

 
ああ、何て可愛いんだろう。


小さな子供達から独り占め宣言を受けるだけで、もう笑みが止まらない。


純粋過ぎる子供達を見ていると、まるで心が浄化されたような気分に……。

 

「おいお前ら、俺から七瀬を取るんじゃねえよ」

 

と、私が口角を上げてにやけた所にタイミング良く登場してきたのは、私と同い年の金井家の三男。


生まれてから1度も染めた事のない髪は日焼けのせいで色素が抜け、所々明るい茶色に光っている。


目はぱっちりと大きな二重で、けれど今は子供達を睨んでいるせいでその双眸には光すら見受けられなくて。


服を着ていても分かる程に鍛え上げられた筋肉、Tシャツから覗く褐色に焼けた健康的な肌。