君の甘さには敵わない。

彼らの登場に驚いた瑛人は慌てて私の腕から手を離し、


(今だ!)


私は、チャンスとばかりにその場から抜け出した。


「げ、七瀬ちゃんまでそっち行くの!?清涼、この罰は後でしっかり行使するから覚えてろよ!」


双子の方に移動した私を見つめた後、そうやって大袈裟に顔を歪める彼は、もういつもの瑛人そのもの。



そんな風におちゃらけた態度を取っている小悪魔男子からの蜂蜜のように甘い言葉に少しばかり胸が高鳴った事は、墓場まで持って行くことにしよう。




(…ん?この2人、私に寝て良いよって言ってたよね?やった!)


と、そこで双子がリビングに訪れた本当の理由を思い出した私は、その嬉しさに耐えきれなくなって笑みを零した。


だって、全員が寝静まった夜は、運が良ければ誰にも邪魔されずに朝樹と話せる唯一の時間だから。


「ありがとね2人共、じゃあ私寝てくる!瑛人、後は頼んだからね!おやすみ!」


彼らに笑顔で手を振った私は、この機会を逃さぬ勢いでリビングを飛び出した。





 
「あー、今日も疲れた…」


自室へ向かう道すがら、私は大きく伸びをして独り言を零した。


今日も、颯さんと千晶さんにこれでもかという程に独り占めされてしまった。