君の甘さには敵わない。

泡だらけの手で瑛人の手を掴むと逆に掴み返されるし、身をよじれば後ろからバックハグをされる。


「他の人に見られたらどうするの!?お願いだからあっち行って」


「やっと七瀬ちゃん独り占め出来たんだから、今更俺がどっか行くわけないでしょうが!誰かに見られたらそいつを追放するまでだよ」


「だから、此処は瑛人の家じゃないってば!」


拉致のあかない会話に加え、まるで危機感を覚えていない幼馴染み。


「とにかく、洗い物する気ないなら私から離れて!」


そうして、邪魔な男達が居ないからこれでもかと甘えてくる彼を何とかして引き剥がそうと、ありったけの力を込めて身体をねじっていると。



「ナナお姉ちゃーん、もう寝る時間だってお兄ちゃんが言ってたー!」


「颯お兄ちゃんが言ってたんだよー!」


いきなりリビングのドアが開く音が聞こえたかと思うと、カウンターからひょっこりと双子が顔を覗かせ、


「「あれ、何してるの…」」


清と涼は、瑛人にバックハグをされている私を見てビー玉のように目を丸くした。


「うぉい!おい清涼、ビビらすなってあれ程言ったろ!?」


最悪の場合、彼らが兄達に今の出来事を告げ口するかもしれないと考えたのだろう。