君の甘さには敵わない。

(どういう、事…?)


颯さんと千晶さんが私を本気で狙っているのは知っている、だから朝樹との関係を隠してきた。


でも、今のこの状況はどうやって説明したらいい?



「やっぱ、俺もあの2人のライバルになろっかな」


私の手首を握った瑛人の手から、泡が弾ける音が聞こえる。


後ろから私の肩に頭を乗せたのか、彼の半乾きの髪の毛から水滴が滴り落ちて、それが私の服に浸透していく。


「ちょ、ちょっと待って、」


私は目を見開いたまま、掠れた声で彼の行動を阻止する。


(これは、冗談だよね…!?)



いや、もしも彼が本気だったらどうすればいいんだ。


訳が分からないこの状況に、私は上手く言葉を紡げる程の語彙力を持ち合わせていなくて。


「あの、冗談だよね、」


「当たり前じゃん?でも、結婚して欲しいのは本気」


恐る恐る口を開けば、もっと私の頭をこんがらせる返答が返ってきた。


(……瑛人、)


ここで、私は完全に確信した。



背後に立つ確信犯は、完全に私の反応を伺って遊んでいるという事に。



(やっぱり瑛人って最低!)


そうと分かれば話は早い。


「一旦離れてくれない…?ねえ瑛人、取り敢えず離れ」


「やだ」


「いや、やだじゃなくて!」