君の甘さには敵わない。




その後、順番にお風呂に入った私達はそれぞれが自室やリビングで自由時間を過ごしていた。


昼からほぼ話す機会がなかった朝樹は夕飯を食べ終わってすぐにお風呂に入ってしまい、それから1度もリビングに降りて来ていない。


早く朝樹と話したいのに、生憎私は食器洗いという名の家事に追われているから易々とリビングを離れる事が出来なくて、



「七瀬ちゃーん、あんな奴らに構うくらいなら俺との結婚考えた方が良いんじゃん?」



最悪な事に、お風呂から上がったばかりの瑛人に絡まれている。


「本当に何言ってるの、そんな事言う暇あるなら手伝ってくれない?」


「ごめん、俺、触った食器を割っちゃう病気にかかってるんだよね」


カウンターから身を乗り出して馴れ馴れしく話しかけて来る幼馴染みを睨み付けると、わざとらしく肩を竦めてきた。


「本当最低、早く親と仲直りして出て行ってよ」


「無理無理、俺には七瀬ちゃんと朝樹のこれからを見届ける義務があるからね」


「ちょっと!?」


彼は本当に危機感がない、こうして少し私が気を緩めるとすぐに危うい事を口にする。


泡だらけのお皿を洗いながら目をつり上げると、


「んふふ、ごめんってー。てかやっぱりさ、俺と結婚する気ないの?」


全く反省の色を見せない謝罪の言葉が返ってきた。