君の甘さには敵わない。

瑛人はこれまでも何かにつけて私と朝樹の関係性がばれそうな言動を繰り返してきていたから、もう迷惑以外の何者でもない。


これ以上こちらが被害を被る前に、彼には早急に帰宅していただきたい。



「いっ…!?今の結構本気だったよね、ダメージ大きいんだけど、」


少し力を入れ過ぎたのか、床に尻もちをついて呻く瑛人に、ざまあみろと鼻で笑う颯さん。


「ねえー、マジで俺の七瀬ちゃんにちょっかい出さないでくれる?」


「七瀬の何を知ってそんな口きけんだよ」


そして、私が瑛人に気があるわけではないと分かっているはずなのに、彼は何とも心が揺れ動く台詞と共に颯さんといがみ合い始めて。


「ちょっと2人共、喧嘩は良くないから落ち着いて。ね?」


部屋の雰囲気が悪くなっていくのを感じた私は、しどろもどろになりながらそう声を掛けるものの、


「七瀬ちゃんは静かにしてて、これは俺と颯の問題だから!」


「知るかそんなもん、あと呼び捨て止めろ」


悲しいかな、空振りに終わっただけだった。



と、その時。


「あー、ナナお姉ちゃんだー!」


「2人喧嘩してるー!」


何処からかパタパタと可愛らしい足音が聞こえたかと思うと、仲良く手を繋いだ双子がリビングに入ってきた。