君の甘さには敵わない。

颯さんは妖艶な笑みを浮かべ、


「キスマ消したの千晶だろ。…どっちにしろ、お前は俺のもんだから関係ねぇけどな」


自分がキスマークを付けた場所を余裕そうに親指で軽く押すと、そのまま唇を私の顔に近付けてきた。


(ちょっ、口と口は駄目!)


彼がやろうとしている事に気付いた私は、慌てて目を見開いて拒否の意志を見せる。



だって、私のファーストキスは、




「ちょっとお!?颯君、俺の七瀬ちゃんに何してくれてんの!?」





朝樹君に取っておいているのだから。



しかし、颯さんの下心満載な目論見は、偶然リビングに顔を見せた瑛人によって阻まれた。


「そこ!レッドカード!今すぐ離れなさい!」


プラスチックでできた空のコップを手にしていた彼は迷わずそれを放り投げ、まるで試合中の審判がやりそうなポーズを取りながらこちらに近付いてきて、
 

「誰だよお前、お前につべこべ言われる筋合いはねぇよ」


私との雰囲気をぶち壊しにされた颯さんが、こちらが震え上がりそうな程に恐ろしく低い声で威嚇する。


その台詞は、正論と言えば正論である。



「俺は七瀬ちゃんの未来の結婚相手ですけど?そういう馬鹿げた真似は今後一切しないで貰えますかね?」


「…何て?」