君の甘さには敵わない。

「…颯さん、こうして見ると美形だよなぁ」

 
口さえ閉じていれば信じられない程に美しい颯さんは、目を瞑った姿すら神々しく思えてくる。


…というより、金井家は全員美形すぎるのだ。


非の打ち所のない彼らの顔が羨ましい、というより遺伝子レベルで羨ましい。



その彫刻のような美しい顔をもっと間近で見たくて、キッチンに向かっていた足は自然と颯さんの方へと方向を変える。

 
こんなに格好良いのに大学では彼女を作らなかった彼の事が、何だか色々な意味で凄いと思うと共に尊敬の念まで抱いてしまう。



とうとうソファーの真横まで来てしまった私は、絶対に彼を起こさないように細心の注意を払いながらその場に膝をついた。


こんなにも至近距離で颯さんの顔を眺められるだけでも恐れ多いのに、何とこの男の顔には毛穴が1つも見当たらない。


(どんなスキンケアしてるのこの人…)


彼の日焼けした肌は見るからにツルツルしていて、千晶さんの部屋にあったクッションのように撫でたい衝動に襲われる。


(起きるかな?…いや、一瞬なら、)


心の中で葛藤したのはわずか1秒。


腹を括った私が、颯さんのツルスベ肌に触ろうとそっと手を伸ばした時。




「やっと来たか」


眠っていたはずの颯さんの唇が弧を描き、伸ばした手を掴まれた。


「へっ!?」