「ナナちゃーん、アイシャドウについて相談乗って欲しいなー」


「七瀬、そんな奴放っておけ。こっち来いよ」


「あ!七瀬ちゃん七瀬ちゃん、そろそろ俺との結婚考えてくれた?」


 
全毛穴から汗が吹き出る程に暑苦しい夏休み。


宿題は早めに終わらせてあとはアイスでも食べてのんびり過ごそう、なんていう最高のプランを考えていたはずの私ー北川 七瀬(きたがわ ななせ)ーは今、


「あの、私分身出来ないので順番でも良いですか?それと暑苦しい瑛人(えいと)、今すぐ離れて」


どういう訳か、“旅行に行けずに残された可哀想な子供達の世話”という名目で、男だらけの家で夏休み限定の同居をする羽目になっている。



「順番とか関係ないよ、だってナナちゃんは僕の所にずっと居ればいいんだから」


「おい千晶(ちあき)、その言葉は聞き捨てならねえ。誰がお前みたいな奴と一緒に過ごしたいと思うんだよ」


この家で生活を初めてはや1週間、もう気まず過ぎて穴があったら入りたい、家に帰れるなら帰りたい。


お昼ご飯を食べ終えた後、拉致のあかない会話を止めようと口を開いたら逆に男達が私を巡る言い争いを始めて、


「本当勘弁してくださいよ…」


冷房がガンガンに効いているリビングで、私は本日何度目かになる大きな溜め息を吐いた。