わたしは、右斜め後ろの席に座っている男子に目をやる。


前の席の男子と話しながら、笑っている彼。


古川(ふるかわ) 昂輝(こうき)


クラスメイトで、家が近所の幼なじみ。


そして小学生の頃からずっと変わらず、わたしが片想いを続けている人でもある。


そんなわたしの今一番の願いは……ただひとつ。


【アイツと両想いになれますように】


なのだけど。


……うわ! やばい、どうしよう。


心の中で思うだけにするはずが、手にしていた黒のマジックペンでうっかり短冊に書いてしまった。


この短冊は昇降口前に飾るから、他の人の目にも触れてしまうというのに。


あーー。何やってるの、わたし!


いくらなんでも、これを笹に結ぶわけにはいかない。


こんなの男子に見られたら。ましてや、アイツに見られてしまったら……絶対からかわれるに決まってる。


誰かに見られないうちに、これは早く捨ててしまおう。


そう思い、わたしが席を立ち上がったときだった。


「なぁ、ひよこ。お前は短冊になんて書いたんだよ?」