「シャワーを浴びたら、これをよかったら着なさい」

そう言い、お雪が手に持っている風呂敷を手渡す。沙月が風呂敷を開けると、そこには紺色の生地に紫陽花の模様の浴衣が入っていた。大人っぽい雰囲気の浴衣なのだが、夏祭りなどで見かける浴衣とは生地が違うことに沙月は気付く。

「これって絞り浴衣?沙月、いいの貰ったね。まあ、僕が来た方が見栄えしそうだけどね」

沙月がジッと生地を見ていると、九尾の狐のキングがどこからか現れ、浴衣を見つめる。お雪に睨まれるも、キングは「僕が着た方が〜」と話し続けている。

「絞り浴衣は、職人の方が染め上げて作っているの。そして、その技術は素晴らしいものだわ。たまたまその職人の方と知り合ってこの浴衣を貰ったのだけれど、この色は私よりもあなたに似合うと思ったから着てほしいわ」

お雪はそう言い、まだナルシストな発言を続けているキングを引っ張って離れていく。沙月は浴衣を抱き締め、お風呂場へと入った。