志津と春子は足並みを揃えて家具工房の敷地の外へと歩き始めたが、
「あ、そうだ」
と振り返った春子の表情が仄かに緩んでいる。
「主人を紹介するわ」
彼女の口にした「主人」という言葉が、いやに大人っぽく聞こえた。
「あなた、ちょっと」
春子の呼んだ先から来たのが、その主人である。
志津も目配せをしたか、遅れてもう一人がやって来た。
「私のお友達、伊坂幸枝さんよ」
「どうも、伊坂幸枝と申します」
幸枝はひとつ会釈をする。
「初めまして、神藤勝俊です。春子が世話になったみたいで」
「とんでもございませんわ、私こそ春子ちゃんには仲良くしてもらっていますから」
春子は勝俊の腕に手を当てて、
「勝俊さんはね、ホルンとピアノがとってもお上手なのよ。音楽学校でも成績優秀だものね!」
と笑いながら彼に語りかけている。
「いやあ、それほどでも無いさ。春子さんが僕の音楽を聴いてくれることが生き甲斐だよ」
「あら、いやだわ」
頬をポッと紅くした春子は気恥ずかしくなって俯いた。一同がその様子を微笑ましく見ている。
「……其方は、志津さんの……?」
幸枝はもう一組の方に目を向ける。
「高辻康弘です」
少し緊張したような調子で握手の手を差し出したのは康弘である。
「伊坂幸枝と申します、その、数年前は本所の街を助けていただいて有難うございました……」
幸枝は握手をして、軽く一礼する。
「あれが僕らの仕事ですよ。なあ、志津」
「ええ、幸枝さんも覚えていてくれて有難う。お兄さんにもよろしく伝えておいてね」
柔らかな表情の夫妻に、幸枝はひとつ頷く。
「勿論よ!」
「あ、そうだ」
と振り返った春子の表情が仄かに緩んでいる。
「主人を紹介するわ」
彼女の口にした「主人」という言葉が、いやに大人っぽく聞こえた。
「あなた、ちょっと」
春子の呼んだ先から来たのが、その主人である。
志津も目配せをしたか、遅れてもう一人がやって来た。
「私のお友達、伊坂幸枝さんよ」
「どうも、伊坂幸枝と申します」
幸枝はひとつ会釈をする。
「初めまして、神藤勝俊です。春子が世話になったみたいで」
「とんでもございませんわ、私こそ春子ちゃんには仲良くしてもらっていますから」
春子は勝俊の腕に手を当てて、
「勝俊さんはね、ホルンとピアノがとってもお上手なのよ。音楽学校でも成績優秀だものね!」
と笑いながら彼に語りかけている。
「いやあ、それほどでも無いさ。春子さんが僕の音楽を聴いてくれることが生き甲斐だよ」
「あら、いやだわ」
頬をポッと紅くした春子は気恥ずかしくなって俯いた。一同がその様子を微笑ましく見ている。
「……其方は、志津さんの……?」
幸枝はもう一組の方に目を向ける。
「高辻康弘です」
少し緊張したような調子で握手の手を差し出したのは康弘である。
「伊坂幸枝と申します、その、数年前は本所の街を助けていただいて有難うございました……」
幸枝は握手をして、軽く一礼する。
「あれが僕らの仕事ですよ。なあ、志津」
「ええ、幸枝さんも覚えていてくれて有難う。お兄さんにもよろしく伝えておいてね」
柔らかな表情の夫妻に、幸枝はひとつ頷く。
「勿論よ!」



