「ご存知ないの?私達はあなたがたのお仲間が使っている武器を造っているのよ、融通しなさいよ」
更に笑い声を上げた憲兵は、少女の肩を強く押した。幸枝は思わず後方によろめく。
「おっと」
何とかバランスを崩さずに立ち上がったところを、憲兵は再び打擲する。
今度は一瞬、右肩から下の腕全体の感覚がなくなるような気がして、視界がぐらりと揺れ動いたかと思うと、雨に濡れた地面に転がるような体勢になっていた。
「こんな汚れた女があんな大企業の人間な訳があるか!」
幸枝は甘んじて再度立ち上がり、憲兵の元へ歩いて行き数枚の紙幣を突き出した。
「其処を通しなさい、これで通して頂戴」
憲兵はせせら笑ってそれらを払い飛ばす。ばらばらと飛んでいった紙幣はぐっしょりと濡れた地面を揺蕩っている。
「無関係な泥だらけの女を通す筈が無いだろ」
「首相も居るのだぞ、立場を弁えるべきだ」
雨は一層強く、未だ行進曲が囂々と降る雨音と混ざって響いている。
「ほうら、何処の嬢ちゃんか知らないが、雨も強くなってきたし帰った、帰った」
「嫌よ、帰りません。入れないのなら呼んできて頂戴」
幸枝は毅然とした態度で憲兵に告げる。
「どうしても会って話さなくちゃいけないの、だから……」
競技場の側へ向かおうとした少女が二人の憲兵に押さえつけられる。
「これ以上逆らうとどうなるか分かるだろうな、煩わしい。大企業の社名やら金やらをちらつかせているが、いかにも分かりやすい嘘を吐くな」
すぐ向こうに見える学生の中に清士が居るかもしれないと思うと、幸枝の耳には憲兵等の声も届かなかった。
更に笑い声を上げた憲兵は、少女の肩を強く押した。幸枝は思わず後方によろめく。
「おっと」
何とかバランスを崩さずに立ち上がったところを、憲兵は再び打擲する。
今度は一瞬、右肩から下の腕全体の感覚がなくなるような気がして、視界がぐらりと揺れ動いたかと思うと、雨に濡れた地面に転がるような体勢になっていた。
「こんな汚れた女があんな大企業の人間な訳があるか!」
幸枝は甘んじて再度立ち上がり、憲兵の元へ歩いて行き数枚の紙幣を突き出した。
「其処を通しなさい、これで通して頂戴」
憲兵はせせら笑ってそれらを払い飛ばす。ばらばらと飛んでいった紙幣はぐっしょりと濡れた地面を揺蕩っている。
「無関係な泥だらけの女を通す筈が無いだろ」
「首相も居るのだぞ、立場を弁えるべきだ」
雨は一層強く、未だ行進曲が囂々と降る雨音と混ざって響いている。
「ほうら、何処の嬢ちゃんか知らないが、雨も強くなってきたし帰った、帰った」
「嫌よ、帰りません。入れないのなら呼んできて頂戴」
幸枝は毅然とした態度で憲兵に告げる。
「どうしても会って話さなくちゃいけないの、だから……」
競技場の側へ向かおうとした少女が二人の憲兵に押さえつけられる。
「これ以上逆らうとどうなるか分かるだろうな、煩わしい。大企業の社名やら金やらをちらつかせているが、いかにも分かりやすい嘘を吐くな」
すぐ向こうに見える学生の中に清士が居るかもしれないと思うと、幸枝の耳には憲兵等の声も届かなかった。



