「今はそれぞれの仕事に集中しましょう。それに……良い知らせもありますよ」
 「良いお知らせ?」
 幸枝は首を傾げた。
 「今後は私が貴女の『担当者』です。最後迄」
 幸枝の表情がぱっと明るくなる。
 「まあ……これからは長津さんとご一緒できるのね!」
 「はい、改めてよろしくお願いします」
 「ええ、私こそ。本当に嬉しいですわ」
 二人は握手を交わし、長津は裏口からビルの外へ出た。幸枝は笑顔で出口から長津の姿を見送る。
 (これからずっと長津さんと一緒にお仕事ができるなんて……幸先が良いわね)
 幸枝も後から本社の正面に回っていつもの作業場へと向かう。長津は晴れ晴れとした気分で言問橋を渡っていた。