そしてこの人間であれば真の信頼を築きながら安定的に任務を全うするであろう。
 「……私の人選が功を奏したな。君はこの件に関して最も理想的な人間だ、長津君」
 主計中佐は席を立ち、大机の前に出た。
 「良いか、この仕事は無期限だ。長期に渡り大きな負荷を背負う覚悟は出来ているな」
 「はい」
 長津の身体に力が入る。
 「君であれば伊坂工業との信頼を保持しながら取引を続けることができるだろう」
 「では」
 微かな期待を含んだ声が漏れる。
 「君の申出を承諾する。但し、君は私とこの件に関する責任を折半する立場にある。絶対に間違いやしくじりを起こすな。分かったな」
 「承知しました」
 主計中佐と長津は堅い握手を交わした。