それでも大丈夫だと慰めるように背中に添えられた手が、尖ったり落ち込んだりする不穏な彼女の気持を宥めている。
「長津さん……すみません。私としたことが、今回ばかりは本当に醜いものを……」
長津に全身を委ねたままの幸枝がポツリと呟く。
「少しは落ち着きましたか」
「……はい」
幸枝の身を離した長津は、彼女のほんのりと紅い頬に手を当てた。
「痛みますか」
「今はあまり……」
長津は幸枝の顔を覆う髪を両耳に掛けて続ける。
「伊坂さん。貴女の身に何が起きたかは敢えて訊かないけれども、辛くはありませんか」
「十分、辛いですよ……でも、逃げられはしないじゃないですか」
少し腰を下げた長津はまっすぐな目で幸枝の戸惑う表情を見る。
何か彼女を励ますことができるような言葉を出そうと長津がその口を開いたとき、彼に幸枝の寂しげに潤んだ目線が刺さった。
次の瞬間に、一筋の涙が溢れる。止まらない涙に対する情け無さが、再び赤く腫れた頬を濡らしている。
「すみません、また泣いてしまいました」
「苦しいのなら、苦しいと言っても結構です」
手の甲で涙を無理に拭った幸枝は、力んだ笑みを見せた。
「……いえ、ぐずぐずなんてしていられません。家のためにも、会社のためにも、平然と振る舞わなければなりません」
大きな両手で包んだ小さな手は濡れて月明かりに光っている。
「何時迄もそうして気を張っていると、また思いがけぬところで今日のようなことになりますよ」
幸枝は俯き加減で話し始めた。
「私はこの家の人間で良かったと思っています、でも……どこか寂しいのです」
「長津さん……すみません。私としたことが、今回ばかりは本当に醜いものを……」
長津に全身を委ねたままの幸枝がポツリと呟く。
「少しは落ち着きましたか」
「……はい」
幸枝の身を離した長津は、彼女のほんのりと紅い頬に手を当てた。
「痛みますか」
「今はあまり……」
長津は幸枝の顔を覆う髪を両耳に掛けて続ける。
「伊坂さん。貴女の身に何が起きたかは敢えて訊かないけれども、辛くはありませんか」
「十分、辛いですよ……でも、逃げられはしないじゃないですか」
少し腰を下げた長津はまっすぐな目で幸枝の戸惑う表情を見る。
何か彼女を励ますことができるような言葉を出そうと長津がその口を開いたとき、彼に幸枝の寂しげに潤んだ目線が刺さった。
次の瞬間に、一筋の涙が溢れる。止まらない涙に対する情け無さが、再び赤く腫れた頬を濡らしている。
「すみません、また泣いてしまいました」
「苦しいのなら、苦しいと言っても結構です」
手の甲で涙を無理に拭った幸枝は、力んだ笑みを見せた。
「……いえ、ぐずぐずなんてしていられません。家のためにも、会社のためにも、平然と振る舞わなければなりません」
大きな両手で包んだ小さな手は濡れて月明かりに光っている。
「何時迄もそうして気を張っていると、また思いがけぬところで今日のようなことになりますよ」
幸枝は俯き加減で話し始めた。
「私はこの家の人間で良かったと思っています、でも……どこか寂しいのです」



