分かりやすく困惑を顔に出した長津であったが、幸枝を手招きして顔を近づける。
 「本来口外を禁じられているのですが、私が再び伊坂さんとこうして会うことのできる方法が一つだけあります。それは、次回の『担当者』が欠けることです」
 長津の口元に顔を寄せた幸枝の目が大きく開いた。
 「次回の『担当者』が何らかの事情で参上出来なくなった場合に限り、前回の『担当者』が代打として担当します」
 「代打」に期待した幸枝の口角は抑えきれないと言わんばかりに上がっていたが、長津は最後に釘を刺した。
 「ただし、私も次の『担当者』については一切知り得ません。ですから、希望は持たないでください」
 幸枝の切り揃えられた髪の裾が微かに揺れた。