それはいつか浅草の喫茶店で見た、あの全てを見透かしたような視線である。
「……成田さんも、変わったのではなくて?」
幸枝に見つめられた清士も、あの日の視線を思い出したのか、ごくりと喉を鳴らした。
「私は過去の成田さんを知らないから勝手は言えないけれど、貴方の噂は各所で流れているわよ。この一、二年は特に。それに街を歩くときに周囲をよくご覧になって。すれ違う女性、皆が貴方のことを見ているわ。私は浅草を一緒に歩いた時にそれを見逃さなかったわ」
清士は「噂」という言葉に眉を顰めた。
「噂?」
不敵な笑みを浮かべた幸枝は、
「ふふっ、悪い噂なんかじゃあないわよ」
と答える。
「貴方は当分学問に専念したいと云っていらしたけれど……成田さん、貴方自身を冷静に考えてみたら分かる話だわ。帝大の法科生を目指す一高の学生というだけでも充分魅力的なのに……背が高くて顔も綺麗で名家の出身、天は貴方に幾つ与えたのかしら」
「やけに誉めるんだな、君は」
清士は恥ずかしさからか、片肘をついた手で視界を遮った。
「事実を並べただけよ……少なくとも、私にはそう見えているというだけで」
(あとは一つ芯の通ったところがあれば完璧なのだけれど)
幸枝はふうっと息を吐き、二人の間に沈黙が流れる。
「……君だって名門の人間じゃないか、それに……」
机上で腕組みをした清士は幸枝の目をじっと見た。
視線に動揺した幸枝は、清士の口を遮るように早口で話し始める。
「……成田さんも、変わったのではなくて?」
幸枝に見つめられた清士も、あの日の視線を思い出したのか、ごくりと喉を鳴らした。
「私は過去の成田さんを知らないから勝手は言えないけれど、貴方の噂は各所で流れているわよ。この一、二年は特に。それに街を歩くときに周囲をよくご覧になって。すれ違う女性、皆が貴方のことを見ているわ。私は浅草を一緒に歩いた時にそれを見逃さなかったわ」
清士は「噂」という言葉に眉を顰めた。
「噂?」
不敵な笑みを浮かべた幸枝は、
「ふふっ、悪い噂なんかじゃあないわよ」
と答える。
「貴方は当分学問に専念したいと云っていらしたけれど……成田さん、貴方自身を冷静に考えてみたら分かる話だわ。帝大の法科生を目指す一高の学生というだけでも充分魅力的なのに……背が高くて顔も綺麗で名家の出身、天は貴方に幾つ与えたのかしら」
「やけに誉めるんだな、君は」
清士は恥ずかしさからか、片肘をついた手で視界を遮った。
「事実を並べただけよ……少なくとも、私にはそう見えているというだけで」
(あとは一つ芯の通ったところがあれば完璧なのだけれど)
幸枝はふうっと息を吐き、二人の間に沈黙が流れる。
「……君だって名門の人間じゃないか、それに……」
机上で腕組みをした清士は幸枝の目をじっと見た。
視線に動揺した幸枝は、清士の口を遮るように早口で話し始める。



