「あのね、ユト。陛下の事なんだけど……疲れているみたいだから、陛下にも何か息抜きになるような事をしてあげるって出来ない?」



 きゅっと胸元を握り締めて訴えるファウラを、ユトはなんと健気なと小さく呟いた。

 


「ファウラ様。陛下にはお茶会での事を沢山話してあげてください。きっとファウラ様の楽しそうに語る姿が、陛下にとって一番の癒しですから」


「?」


「とにかく、陛下の事は大丈夫です。沢山楽しんで来てくださいね」




 ね!と勢いよく言われてしまえば、首を縦に振る事しか出来ない。こういう所はもしかしたら主である、ルイゼルトに似たのかもしれないと、小さく笑った。

 こうしてお茶会に参加する事になったファウラは、開催日までルイゼルトとは目も合して貰えないまま、その日を迎えた。

 この日のためにルイゼルトが用意していたというドレスと、彼から貰った髪飾りで着飾れば、不思議と初めてのことに挑むというのに、勇気が湧いてきた。

 侍女達の気合が入った着替えの手伝いには少々慣れてきたところではあるものの、褒め言葉を投げられ続けるのには未だ慣れない。照れながら感謝の言葉を伝えるだけで、更に彼女達はより勢いを増して褒め倒してくる。

 嬉しい気持ちに包まれながら、一人の付き添いの侍女と共に用意された馬車へと乗り込む。