どうやらユトも中々苦労していそうだ。その原因に自分が居るのではないかと思っていると、彼は懐から一通の手紙を取り出した。
手紙を手渡されたのはルイゼルトではなく、自分に差し出されたファウラはおずおずと受け取った。
「伯爵家の御令嬢から、お茶会のお誘いのご案内だそうですよ」
「お茶会……ですか」
「ここ数日の仕事でお疲れでしょう?一日ぐらい少し羽を伸ばしてくるのは如何ですか?」
「でも……」
疲れているのは自分だけではないはずだと、ファウラはルイゼルトを見つめた。視線に気づいた彼は、一瞬何かを考えるように視線を逸らし、行きついた考えに納得したのか頷いてゆっくり立ち上がった。
「……女しかいないなら、こっちには好都合だ」
「え?」
「行って来い。外での交流を広げてくるのも、後々役に立つ」
こちらを見向きもせずにそう言いながら歩きだすルイゼルトに、小さく分かったと答えると、彼は部屋から出て行った。
ユトと残ったファウラは手紙の封を開けて、手紙の内容を確認する。
「開催場所はハウバース家の庭園ですか。あそこの屋敷の庭園も中々に見事だと聞きますよ。ってファウラ様、どうかされました?」
「こういうの初めてだから少し緊張して……」
「大丈夫ですよ。女性にとって、お茶と甘い菓子を囲んで話す時間はあっと言う間に過ぎていくものですから」
「そうなの?」
「はい。そういうものなんです」
女の事を自信満々に語るユトが可笑しくて、思わず笑ってしまう。お陰で、積み重なってきていた緊張が解けていた。
残る気掛かりはルイゼルトの事だ。手紙を元に戻して、ユトに向き直る。