立ち去っていく足音を聞きながら、悪るい空気が消えていく感覚に胸を撫で下ろした。
そうしているのもつかの間、いきなり目の前の垣根から、柔らかい癖毛を揺らし穏やかな表情で見つめてくる男性が顔を覗かせてきた。
「……っと」
「きゃっ!!」
驚き短い悲鳴を上げると、男性は申し訳なさそうに眉を下げる。急いで垣根を越えるように回ってやってきた彼は、綺麗に一礼をして非礼を詫びた。
「驚かせて申し訳ありません。気配がしたものでもしかしたらと思って来たのですが、まさかこんな可憐な女性がいるとは思わず……」
「い、いえ……あの、あなたは?」
「名乗り遅れました、私はエルディン・ロージャスと申します。エルディンと呼んでいただければ幸いです」
突然登場したエルディンと名乗る男を前にどうしていいか分からずにいると、動揺したファウラを気遣って自然なエスコートで歩き出す。彼に着いて行くように足を動かしていると、落ち着いた声が上から落ちてくる。
「先程は嫌な現場に居合わせましたね。すぐにお助け出来ず申し訳ない」
「い、いえ。お気になさらないで下さい」
自分の足でこの場から離れようとしていたくらいだ。それに小さな影口など、日常的なものだったファウラにとっては痛くも痒くも無い。



