悪しき穢れの力が見えた事は確かだが、ルイゼルトがそんな恐ろしい人物ではない事をファウラは知っている。



「陛下は私の部屋に、花を届けて気遣ってくれる人よ。それに、私の体調を気遣うことも出来る優しい人。そんな陛下が、本当に悪魔と契約してると思うの?」




 顔を見合わせて、噂に踊らされていると頭を下げる侍女達に、慌てて顔を上げるように声をかけた。

 噂が勝ってに一人歩きして、ありもしない事を身につけて大きくなっていくのをファウラは知っている。王宮に居た頃は、それで苦しめられたのだから。

 まだルイゼルトのことを深く知った訳ではないが、少なからずこの数日間でファウラの中にある彼への印象は噂とは大違いだと感じていた。関わる事が少ない侍女達にとっては、噂を信じてしまうのも無理はないとは思うが、これだけは信じて欲しかった。



「あなた達の国王陛下は、とても優しい人だと私はそう思うわ」


「ファウラ様ったら……一体いつからそんなに陛下の事をお好きになったんですか!!」


「えっ!!!」



 予想外の反応に顔を赤らめると、侍女達はニヤニヤと顔を歪ませた。



「こんな素敵な方が嫁がれてきたんですもの。陛下もさぞ喜ばしいことでしょうね」


「それで?陛下とはどこまで??」


「陛下の何処が好きなんですかあ?」


「え、えっと……!!」



 昨日の夜の事が鮮明に蘇り、固まる初心なファウラを前に侍女達は再び楽しそうに彼女を囲う。