「もしかして、私……今日からここで針子の仕事を?」



 王族に嫁いできたからといって、仕事がないわけはない。かといって、正式な発表をしていない現状では、まだルイゼルトの補佐役や公務に出向くわけには行かないのだ。

 そこで与えられた仕事として、縫子というのはいささかどうかと思うが、何もやる事がない今、仕事が与えられるのは正直嬉しい。街でも針仕事には触れていたため、自身はある。

 仕事が出来ると燃えるファウラに、侍女達は互いに顔を合わせて一瞬呆けるが、堪えきれずに笑みを零した。




「まさか、陛下の婚約者様にそんな事させられませんよ」


「私達が凄く楽しみにしていた仕事を奪わないでくださいよ〜!」




 クスクスと笑う侍女達は、楽しそうに次から次へと生地をファウラの近くへと集めていく。




「あの、一体これから何を……?」


「あら?ユト様からは説明していらっしゃるとお聞きしたのですが……」


「え〜っと……」




 昨日の記憶を遡ろうとするがルイゼルトと会った後の記憶が曖昧だ。落ち着かない気持ちを抱えたまま、やって来たユトが何かを説明していたようなそうでないような……やはりハッキリとは思い出せない。