ルイゼルトに気持ちを伝えられた事で心が軽くなった次の日の朝、身支度を整え日課になっている庭園の散歩へと向かうべく扉を開けるが、気合十分な表情を浮かべた侍女達が待ち構えていた。




「おはようございます!ファウラ様!」


「今日もいいお天気でございますね!」


「えっええ、おはよう。あの……一体どうかしたの?」




 質問に答えることなく、逃げられぬように両腕をしっかりと掴まれたファウラは、侍女達の浮かべるにこやかな笑みの迫力に負け、そのまま着いて行くように足を動かした。

 辿り着いた一室で、待ち構えていたのはありとあらゆる生地やレースが、部屋一面を彩っていた。綺麗な色とりどりの生地は、どれも一級品というのは一目で分かる。

 そんな部屋のど真ん中でようやく解放された、ファウラはぐるりと周囲を見渡す。

 知らない地方の独特な染物を生かした生地や、複雑さの中に可憐さを控えめにあしらったレースはどれも目を引くものばかりだ。

 ただ何故こんな場所に連れてこられたのかは、検討もつかない。