気持ちに矛盾が生まれていることは重々承知している。ファウラで心が乱されるこの感情を、まだはっきりと明確な答えを出していないのも、国を想う気持ちがあるからこそ。

 それだというのに嫌われ者を買って出たはずが、ファウラに好かれたいと無意識に行動しているのだ。

 ただそれらの行動は、この国に居座ってもらうための餌にしていけばいいのだとルイゼルトは閃いた。愛想尽かされないようにするのは、こちらの動きを悟らせないようにするため。ファウラに好きになってもらうのは、何かあった時に、自国に帰りたいなどと言わないようにするための甘い餌。

 それであればどれだけファウラに近づこうが、怪しまれずに済むのだから。



(隠し事の一つぐらいしていても、罰は当たらないだろ)



 今までのぎこちない動きは相手を信用させるのに必要な事だったと言い聞かせるように、ルイゼルトは一つ頷いて、ユトが持って来た報告書を受け取った。

 受け取ったその手にはまだファウラの感覚がはっきりと残っていて、無意識にまた触れたいとそう思う自分がいることにルイゼルトは気づくことは無かった。