だがかろうじて残っている理性が、これまで積み上げてきたものを手放すことになると警鐘を鳴らしている。



(こんな事になるなら、愛想尽かされるように徹底的に動いておくべきだったか……ってそれができないから、こんなおかしな事になってるんだろ)

 


 ファウラとの幸せになるための道を歩みたい気持ちが膨れ上がる中、静かに扉が叩かれる。また彼女がやってきてくれたら、などと淡い期待を抱いていたが、見えた親しみのある姿に分かり易く肩を落とした。



「陛下、どうかした?」



 主人のいつもと違う様子にすぐ気付いたユトは、心配そうにルイゼルトを見つめる。

 ユトの視線に何でもないとぶっきらぼうに呟いて、気持ちを切り替える。



(俺は国を守るために動くんだ。ファウラとの道は歩めない。例え、彼女がほしいと思っても……だ)



 ファウラには一緒に歩むと答える事なく、俺の傍に居ろと返答出来たのは辛うじて残っていた理性のお陰だろう。傍に居て貰わなければならないだ――国を守る一つの手段として。