「ああ~……疲れたなあ」



 寝台へとまっしぐらだったが、ふとテーブルの上に見慣れない何かが置かれていることに気付く。

 まだやるべき事が残っていたのかとおずおずとそちらに向かって歩くと、柔らかい甘い香りが鼻を擽った。




「……お菓子?」




 テーブルの上に置かれていたのは、一輪の白い花と焼き菓子だった。すとんと長椅子に座って焼き菓子に手を伸ばすと、その下から一枚の小さな紙切れが床に落ちる。

 首を傾げて紙を拾い上げ、そこに書かれていた文字を見つめて僅かに胸が跳ねるのが分かった。

 ”休め”たったそれだけしか書いていないと言うのに、ファウラの頬は緩んでしまう。




(こんな命令みたいな手紙なのに、どうしてこんなに嬉しいんだろう……)




 昨日のやり取りの後だと言うのに、ルイゼルトはファウラのことを気遣ってくれていた。そんな彼に考えてみれば、まともなやりとりをしていない事に気付く。