その予感は見事、的中する。嫌な予感ほど、人間は感じやすいのかもしれない。

 応接間に到着したファウラに、急使は小さく頭を下げた後でこう言ってきた。



「レゼルト王国第三王女ファウラ殿下に、婚姻の通達を預かって参りました」



 思わず変な声を上げそうになるのをぐっと堪えて、手渡された王家の紋様が入った蝋封が目につく手紙を受け取った。



(追い出しておいて、いきなり何を――?!)



 手紙を中々開かないファウラに、口頭で伝えた方が早いと急使は淡々と話を続けた。



「先日クラネリシア国との同盟が無事に締結された折りに、国同士の友好関係を築き上げる一環としてクラネシリア国王ルイゼルト殿下と当国の姫との婚約が決定致しました。王宮での準備がありますので、本日正午に王宮へ御出でください」



 一方的すぎる通知に、もはや何の言葉も出ない。

 窓の外に見える広く晴れ渡った空は、いつの間にか雲で覆われていた。