悪魔な国王陛下は、ワケあり姫をご所望です。




 光は蒼い目に力を与えるように瞬くと、どこからか吹いてくる風と共に髪を靡かせた。

 歌う声に、影はゆらゆらと揺れ薄れていく。最後の言葉を紡げば、影は完璧に光の中に溶け込んで消えていく。浄化が終われば、ファウラを包んでいた光は静かに消え、再び平穏な空気が流れる。

 周囲を確認し人の気配が感じないことから、とりあえずなんとかなったと、緊張で額にかいた僅かな汗を拭う。

 侍女もすぐに意識を取り戻し、健康そうな血色に戻った顔で、心配をかけたと謝る彼女にファウラは本物の笑顔を向けた。



(良かった……これでとりあえずは何とかなった)



 小さく安堵の息を零して、ユトが戻ってくるまでの時間、侍女とたわいの無い会話に花を咲かせて、平常心を取り戻そうと必死だ。

 使わないと言っていた力を、使ってしまったのだ。母親との約束も破り、自分の意志からも背いてしまうなど、後先が不安だ。

 ただそれよりも見たことも無い悪しき穢れの力に、動揺を隠しきれない。



(あんなに穢れた力を見たのは生まれて初めて……しかもあんな急に……)



 今まで見てきた悪しき穢れの力は、物に宿っていることが多く、大体は影が黒い靄や本来の色を見失うような黒い色をその物に付けることがほとんどだった。今回のように人に宿り、しかも悪魔のような姿形を象った穢れは見たこともない。