案内されたダイニングルームにて、一流のシェフが用意した朝食を一人静かに摂りながら、改めて城での生活に戻ってきたんだと実感する。

 誰かと楽しく笑いながら話し合って食事を囲む事も、寝坊して朝ごはんをかきこむ事もなくなったのだ。これからは見栄えの良い食事が何も言わずに用意され、食器の後片付けもしない。

 日常がゆっくりと変わっていく……そう思うと少しだけ寂しさが滲む。

 新鮮な野菜を頬張りながら、畑で育てていた葉野菜の事を思い出す。




(この野菜も美味しいけど、自分で育てた野菜ってもっと美味しく感じるんだよね……変な形なのが採れると、子供達は大はしゃぎで……)




 食事を進めている手が止まっている事に気づき、出された食事を全て食べ終え暫くすると、頃合を見てユトがやって来た。

 控えていたシェフにご馳走様でしたと会釈してから、ユトのエスコートの元、城内の案内を受けた。

 ユトを見失ったら即座に迷子になりそうな、複雑な城内は、華やかさよりもどこか威圧感を感じる。

 それもそのはず。一年前まで戦争をしていたこの国の城は、防衛拠点としての機能が必要なのだ。その為、華やかさというものは、不必要なもの。

 レゼルト王国の王宮が、無駄にお金を注ぎ込んでいたのかが身に沁みる。