王宮での生活の方が長いとはいえ、街での色濃い生活を送ったファウラにとって、自分で出来る事は自分でやると、侍女達は少々不安そうな表情を浮かべる。



「まだ、体も本調子ではないでしょうし……そう無理をされないで下さい」


「それはもう大丈夫よ。私、元気が取り柄だから」



 街にいた頃は、溺れた子猫を助けようと川に飛び込んでも、山に薬草詰みの競走で夢中になって土砂降りに打たれても風邪を引かない魔女だと言われていたぐらいだ。王宮での生活でも命を狙われても、しぶといくらいに生き残ってきたのだ。

 そう簡単に体を壊す人間ではないと自分で自覚している。



「ですが……昨日倒れてから、朝までずっと寝込んでいらっしゃったので少々心配です」



 侍女の言葉に、そう言えばと過去を振り返る。

 旅の疲れで倒れた訳ではない。緊張で倒れた訳でもない。

 感じたことのない力に押し負けた……そういうのが感覚としては近い気がした。原因はハッキリとは分かってはいないが、今はなんてことはない。

 ファウラは再び大丈夫だと笑って見せ、ドレスの着替えを頼むと、侍女達はここぞとばかりに気合いを入れて手伝った。

 着替えている最中、棚の上の花瓶に珍しい白い花が目に止まる。



「綺麗な花ね」




 そう言うファウラに侍女達の手が僅かに止まったかと思ったが、すぐさまテキパキとした行動でファウラの着替えを進める。


(心配して、花まで持ってきてくれるとか……どこまで出来た侍女さん達なんだろう……)


 自国の王宮の侍女達と来たら……一応王女という立場のファウラにお構い無しに、陰口を堂々と話すのを嫌と言うほど見てきた。



(まあ……それは私の力を知っていたから、なんだろうけど)



 何れこの力の正体がバレた時、今のように優しく接してくれるのかと考えると、表情が曇る。