こうして辿り着いたこの街で、力をまじないと称して仕事にして五年が経った。

 十七歳になったファウラは、力のお陰で収入は安定し、街の住民達の優しさもあって母親の状態も悪化することなく、平和に暮らしている。

 ……そう思っていたが、見える悪しき力によって悪い方へと引き寄せられていた。



「ファウラー!」



 真っ白な一目で高級な物と分かるような服を乱すようにして走ってくる、親しい友人の声にふと振り返る。



「エド……!一体そんなに慌ててどうしたの?」



 エドガー・ロウハーンは、この街があるミッドレイヌの領地を治める、伯爵家の長男。普段なら爽やかで気品溢れる彼が、息を切らして身なりがどうなっても構わないという慌てっぷりに、緊急事態なのだと言わずとも理解した。

 ファウラを目の前に声を出そうとするが、乱れた呼吸のせいで上手いように喋れない。

 落ち着くように彼の背中をさすろうと手を伸ばすが、勢い良く両肩を掴まれた。整った顔がぐいっと近づいてきて思わず背筋が伸びると、無理やり声を振り絞った彼の言葉に、思考が停止する。



「国王からの急使がっ……家にやって来た!!」


「え?」



 思わず零れた声も力なく、動揺が隠せない。

 何か他にもエドガーが言った気がするが、状況を飲み込めていないファウラには届くことはなかった。言われるまま、されるがままでエドガーの屋敷に辿り着くと、嫌な予感が渦を巻く。