地上から小さく顔を出した朝日の眩しい光にゆっくりと目を覚ましたファウラは、見慣れない天蓋付きの豪華な寝台の上で、ゆっくりと体を起こした。

 窓の外の景色は長閑な畑ではなく、見知らぬ広大な街を見下ろすようにして映し出していた。

 白を基調とした家具が置かれた、落ち着きのある綺麗な広い部屋で一人、ここはどこだと考えながら、記憶を遡る。

 完全に覚醒しきれていない頭では、すぐに全てを思い出す事は出来なかったが、首から下げられた指輪のネックレスの感触に記憶の糸が巻き戻った。

 傲慢な異母姉に代わって悪魔王ルイゼルト王に嫁ぐこととなり、街の皆に見送られクラネリシア国へとやって来た。待ち合わせ場所へと向かう道中で山賊に襲われ、為す術がなかったが突如現れた男性に助けられ、何とか危機を脱した。

 そして何とか城へと辿り着いたが、待っているはずのルイゼルト王の姿はなく――山賊から助けた男性がファウラの前にやって来た。




「で、その嫌味ったらしい男性がルイゼルト王だった……と。そこからの記憶が曖昧ね」




 全身に襲いかかるような重たい力が掛かり、体が言う事を聞かない所までは何となく覚えているが、倒れた後の記憶は完全に抜けていた。

 ただ、自分の名前を呼ぶ声だけは薄らと覚えているような気がするが、ハッキリとは覚えてはいない。