王家の血筋が流れる者が持つ蒼い瞳も、側室として迎えられた病弱な母親と共に王宮を追い出された事も、全部を知りながらこの街の住民は黙って受け入れた。



「少し土に栄養が行き届いてないみたいだから、土の交換してあげて。いい?おばさんと一緒に交換するのよ?」


「ええ〜なんでお母さんと一緒に?」


「なんでってこの間喧嘩したのに、謝れてないんでしょ?」


「うう……」


「大丈夫よ。おばさんが大好きなお花をこんなに大切にお世話しているんだもの。本当は謝りたいって気持ち、私には伝わってるから。それを本人に伝えてあげて」



 ファウラの言葉に花を見つめた女性に、大丈夫と手を繋いで微笑むと、女性は俯きながらも頷いた。頑張ると意気込んで、いつもより多めのお代を無理やり握らせて、女性はファウラを見送った。

 そう――街の住民達はファウラの持つ不思議な優しい力に魅了されたのだ。他人を他人と思わず、自分のことのように大切にするファウラの優しい心に。

 悪しき穢れはファウラにしか見えていない、悪魔の力。彼女を不審がり、遠ざけるのも無理もない。

 それでも、彼らは何ら怯えることもなかった。心優しい少女に多くの人が救われたからだ。

 ……だが、王宮内での生活はそうではなかったのだ。