もちろん、翌日に華燭の典を挙げるなどという我が儘は、ユトによって即座に却下された。

 ユトという悪魔との契約が解けたが彼は実体を残し、その上そのまま人の姿を手に入れた。そのためルイゼルトの側近と言う立ち位置は変わることなく居続けた。

 その方が国にとって最も有り難いことだとファウラは思ったが、悪魔の時よりも更に悪魔らしくなったとルイゼルトは怯える毎日を送っていた。

 事件はハヒェル達の洗脳によるもの、神殿の老朽化という形で、公に悪魔の存在が世に出回ることは無く静かに幕を閉じた。

 各地に広まっていた魔石のブローチも回収され、ファウラは浄化の力を隠すことなく使い、人々を癒した。聖女の噂も瞬く間に広がったが、ルイゼルトが権力でもみ消した部分もあるらしいが、あえてそこは聞かなかった。

 そんな悪魔という存在は消えたがルイゼルトの悪魔王という名は、消えることはなくそう囁かれ続けている。ファウラはそれを知ってはいても気には留めることはなかった。



(私はルイの良さを知っている。それを今後は広めていけばいい。それができる立場に今日からなるんだから)



 ファウラはもう一度ルイゼルトを見ると、今度はしっかりと視線が絡まった。